通信販売酒類小売業免許とは?取得条件や要件、注意点をわかりやすく解説!
2025/04/17
インターネット通販の普及に伴い、自社のECサイトやモール型ECサイトを通じて酒類を販売したいという事業者が増加しています。ただし、酒類を継続的に販売するためには、免許が必要で、特に通信販売の場合には「通信販売酒類小売業免許」の取得が必要となります。
今回の記事では、通信販売酒類小売業免許とは何か、取得に必要な条件や手続き、一般酒類小売業免許との違い、さらにはQ&Aまで、実際に免許審査をしていた国税OBの視点で詳しく解説します。
これから通販による酒類販売を検討している人は、ぜひ参考にしてください。
目次
1.通信販売酒類小売業免許とは
通信販売酒類小売業免許とは、インターネットやカタログ販売など、非対面の手段を通じて消費者に酒類を販売するために必要な免許です。
まずは、通信販売酒類小売業免許の「条件」や「需給調整」、「標準処理期間」、「登録免許税」などを解説します。
(1) 通信販売酒類小売業免許の条件
通信販売酒類小売業免許を取得するためには、次のような基本的条件を満たす必要があります。
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✓販売先は一般消費者または料飲店営業等で、酒類販売業者ではない ✓販売方法は通信販売(2都道府県以上の広範な地域の消費者等を対象として、商品の内容、販売価格その他の条件をインターネット、カタログの送付等により提示し、郵便、電話その他の通信手段により売買契約の申込みを受けて当該提示した条件に従って行う販売)である ✓「許可された品目の国産酒類」もしくは「輸入酒類」である |
(2) 通信販売酒類小売業免許の需給調整
酒税法上における需給調整とは、「酒税の保全上酒類の需給の均衡を維持する必要がある場合に需要と供給のバランスを調整するもの」です。もともと酒類業者・酒類業界の経営の安定を確保するための仕組みとして整備されたものであり、その反面として新規参入の障壁になっているとの指摘があります。
通信販売小売業免許における需給調整は、全酒類卸売免許のような免許取得自体の規制ではありませんが、販売できる酒類を一般の酒販店ではあまり売っていない次の酒類に限定することで、実質的に大手メーカーの日本酒・ビールなどの販売に規制をかけています。
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✓小規模メーカーが製造した国産酒類 ✓地方の特産品等を原料とした国産酒類 ✓輸入酒類 |
具体的には、酒類の品目ごとの課税移出数量が全て3,000キロリットル未満(昔の計量単位であった石で換算すると約1万6千600石)である酒類製造者が作る国産酒類や、地方の特産品等を原料として製造委託する酒類で製造委託者ごとの委託数量の合計が 3,000 キロリットル未満である国産酒類、輸入酒類であれば、事前に許可を受けることで、販売が可能となっています。
(3) 標準処理期間
通信販売酒類小売業免許の標準処理期間(申請から取得までに通常かかる期間)は2カ月です。
ただし、添付が漏れている書類や審査を行う上で必要となる参考書類の追加提出又は申請書類の補正が必要となる場合には、その連絡をした日から、その書類の提出等があるまでの間の日数は、この標準処理期間から除かれるため注意が必要です。
(4) 登録免許税
免許の受領時に登録免許税3万円が必要になります。
2.通信販売酒類小売業免許の要件
免許取得には、税務署による審査をクリアする必要があり、基本的に以下の4つの要件が求められます。
(1) 人的要件
人的要件として、経営者や代表者が、過去に税務違反・酒税法違反などを起こしていないことが求められます。具体的には以下のようなケースに該当すると、この人的要件充足することができません。
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✓酒類の販売業免許の許可の取消処分を受けた日から3年を経過していること ✓申請前2年内において国税又は地方税の滞納処分を受けたことがないこと ✓禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わった日又は執行を受けることがなくなった日から3年を経過していること |
(2)場所的要件
場所的要件として、取締り上不適当と認められる場所に販売場を設けていないことが求められます。具体的には以下のようなケースに該当すると、この場所的要件を充足することができません。
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✓酒場又は料理店等と同一の場所でないこと ✓既に許可を受けている酒類の販売場でないこと |
ただし、上記のようなケースであっても、正当な理由がある場合には、酒類販売が認められることもあります。
(3) 経営基礎的要件
経営基礎要件として、破産手続開始の決定を受けて復権を得ていないことや、経営の基礎が薄弱であると認められる場合に該当しないことが求められます。
具体的には次の業績要件と財務要件、経験要件のいずれも満たす必要があります。
<業績要件と財務要件>
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✓業績要件: 直前3期の全ての事業年度において資本等の額(※)の20%を超える額の欠損を生じていないこと ✓財務要件: 直前期の貸借対照表の繰越損失が資本等の額(※)を上回っていないこと |
※「資本等の額」=①資本金+②資本剰余金+③利益剰余金-④繰越利益剰余金
詳細は以下の記事もご参照ください。
<経験要件>
以下のいずれかの経験と、経験の内容によっては「酒類販売管理研修」の受講が必要となります。
| 経験 | 「酒類販売管理研修」の受講の要否 |
|---|---|
| お酒の製造もしくは販売(薬用酒だけの販売を除く。)について、3年以上の経営経験または従事経験 | 不要 |
| 調味食品(醤油や味噌など)の販売について、3年以上の経営経験または従事経験 | 不要 |
| その他の業種での経営経験または、ネット販売事業の経営経験または従事経験 |
必要 |
詳細は以下の記事もご参照ください。
(4) 需給調整要件
需給調整要件として、「酒税の保全上酒類の需給の均衡を維持する必要があるため酒類の販売業免許を与えることが適当でないと認められる場合に該当しないこと」が求められます。
具体的には、国産酒類について、上記1.(2)に記載の通り、酒類の品目ごとの課税移出数量が全て3,000キロリットル未満である酒類製造者が作るお酒や、地方の特産品等を原料として製造委託する酒類で製造委託者ごとの委託数量の合計が 3,000 キロリットル未満であるお酒であることが必要です。
そのため、大手メーカーの日本酒や焼酎、ビールなどは通信販売では基本的に販売できないため、注意が必要です。
3.通信販売酒類小売業免許の申請様式と添付書類
通信販売酒類小売業免許の申請に必要な申請様式と添付書類は以下の通りです。
<通信販売酒類小売業免許取得に必要な申請様式>
| 様式 | 様式番号 | 記載内容 |
|---|---|---|
| 酒類販売業免許申請書 | CC1-5104 | 酒類販売業の申請内容 |
| 次葉1 | CC1-5104-1(1) | 販売場の敷地の状況 |
| 次葉2 | CC1-5104-1(2) | 建物等の配置図(建物の構造を示す図面) |
| 次葉3 | CC1-5104-1(3) | 事業の概要(販売設備状況書) |
| 次葉4 | CC1-5104-1(4) | 収支の見込み(兼事業の概要付表) |
| 次葉5 | CC1-5104-1(5) | 所要資金の額及び調達方法 |
| 次葉6 | CC1-5104-1(6) | 『酒類の販売管理の方法』に関する取組計画書 |
<通信販売酒類小売業免許取得に必要な添付書類>
| 書類名 | 書類の内容 |
|---|---|
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免許要件誓約書 |
欠格要件に該当する事実がないことについての誓約 |
| 申請者の履歴書 | 住所及び職歴(勤務した会社名、業種、担当事務内容)を記載したもの(法人の場合には役員全員のものが必要) |
| 定款の写し | 会社設立時に必ず作成している定款の写し |
| 賃貸借契約書等の写し | 販売場の建物等を確実に使用できることが確認できる書類の写し(転貸の場合には所有者から申請者までの賃貸借契約書等の写し、もしくは所有者からの承諾書も必要) |
| 地方税の納税証明書 | 地方税に係る①未納の税額がない旨、②2年以内に滞納処分 を受けたことがない旨の両方の証明がされた納税証明書 |
| 最終事業年度以前3事業年度の財務諸表 |
最終事業年度以前3事業年度分の貸借対照表及び損益計算書 (販売費及び一般管理費内訳書や製造原価報告書も含む) |
| 土地及び建物の登記事項証明書 |
申請販売場の所在する土地及び建物の全部事項証明書 (建物の登記事項証明書の所在地欄に記載されている地番が複数ある場合には、その全ての地番の土地の全部事項証明書が必要) |
|
通信販売の対象となる酒類である旨の証明書 (課税移出数量証明書) |
メーカーが発行した通信販売の対象となる酒類である旨(課税移出数量が3,000Kℓ未満のメーカーが製造するお酒など)の証明書 |
| 販売しようとする酒類についての説明書 | 販売予定の酒類について、「製造者(メーカー)」、「商品名」、「品目」、「国産酒類or輸入酒類」などを説明したもの |
| 酒類の通信販売における表示を明示したカタログや通販サイト、申込書(申込画面)、納品書の案 |
以下の事項を満たした各書類 ①カタログや通販サイト:特定商取引に関する法律の消費者保護関係規定に準拠していること、二十歳未満の者の飲酒防止に関する表示が適切にされていること、酒類業組合法に基づき標識を表示していること ②申込書(申込画面):二十歳未満の者の飲酒防止に関する表示が適切にされていること ③納品書:二十歳未満の者の飲酒防止に関する表示が適切にされていること |
| 「酒類販売管理研修」の受講証または受講申込書 | 販売管理者の選任予定者の「酒類販売管理研修」の受講証または受講申込書(経験が足りない場合には役員のものも必要) |
| 所要資金の調達方法についての書類 |
・所要資金を自己資金で調達する場合には、資金繰表、資金捻出の根拠説明書、残高証明書、または預金通帳等の写し(預金者名及び残高が分かるもの) ・所要資金を融資で調達する場合には、借入をする金融機関の融資証明書または融資者の原資内容を証明する書類 |
| 通信販売酒類小売業免許の申請書チェック表 | 申請書や添付書類の確認事項をチェックしたもの |
なお、通信販売酒類小売業免許申請の手引きは、以下の国税庁サイトからダウンロードすることができます。
4.一般酒類小売業免許と通信販売酒類小売業免許の違い
「一般酒類小売業免許」と「通信販売酒類小売業免許」については、販売方法や対象者、必要書類、需給調整に違いがあります。ここでは、これらの違いを「必要書類」を中心に解説します。
(1)「一般酒類小売業免許」と「通信販売酒類小売業免許」の比較
<「一般酒類小売業免許」と「通信販売酒類小売業免許」の比較表>
| 比較項目 | 一般酒類小売業免許 | 通信販売酒類小売業免許 |
|---|---|---|
| 販売方法 | 店頭・対面販売 | 非対面の通信販売 |
| 対象者 | 主に地域の消費者 | 2都道府県以上の個人消費者 |
| 必要書類 | 比較的少ない | 多くの添付資料が必要 |
| 需給調整 | 酒場、旅館、料理店等酒類を取り扱う接客業者でないことが要求される(※) | 販売できる酒類が条件をクリアした国産酒類と輸入酒類に限定される |
※ 接客業者であっても販売業免許を付与することについて支障がないと認められた場合には、免許を受けることができます
上記表の必要書類に関して、「一般酒類小売業免許」の申請では提出不要ですが、「通信販売酒類小売業免許」の申請では提出が必要となる書類は次の通りです。
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✓通信販売の対象となる酒類である旨の証明書(課税移出数量証明書) ✓通販サイト等の案 |
(2)通信販売の対象となる酒類である旨の証明書(課税移出数量証明書)
「通信販売酒類小売業免許」の申請において、販売予定の酒類が国産酒類の場合、通信販売が可能な酒類であることを示すために証明書の提出が必要になります。
そのため、メーカー(製造者)に協力してもらい証明書を発行してもらう必要がありますが、一般的には仕入先(卸売業者)経由で入手する方がスムーズに取得できます。
なお、免許申請時には、国産酒類の品目(主に12品目:ビール、発泡酒、清酒、果実酒、甘味果実酒、その他の醸造酒、単式蒸留焼酎、ウイスキー、ブランデー、スピリッツ、リキュール、雑酒)ごとに販売許可を受けることになるため、なるべく多くの品目を製造しているメーカーから証明書を取得し、多くの品目で許可を受けることをおすすめします。
<証明書を取得する際のポイント>
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✓仕入先(卸売業者)経由で入手する方がスムーズ ✓多くの品目を製造しているメーカーから証明書を取得する |
(3)通販サイト等の案
「通信販売酒類小売業免許」の申請においては、実際に運用を予定している通販サイトの画面イメージや、パンフレット・カタログの見本を提出する必要があります。そのため、酒類販売事業の具体的な内容が決まっていない段階では申請が難しく、通販サイト等の整備をある程度進めた段階で初めて申請することが可能となるため、注意が必要です。
なお、通販サイトの画面イメージや、パンフレット・カタログについては、「消費者保護」や「二十歳未満の者の飲酒防止に関する表示」などが適切かどうかを細かく審査されることとなります。
5.通信販売酒類小売業免許におけるQ&A
ここでは、通信販売酒類小売業免許におけるよくある質問をQ&A形式で確認します。
Q1.全品目を通信販売したい場合にはどうすればいいですか?
A1.1都道府県の消費者を対象とすることで全品目を通販できます。
1つの都道府県の消費者等のみを対象として小売を行う場合には、通信販売酒類小売業免許ではなく、一般酒類小売業免許の取得が必要となります。ここで、一般酒類小売業免許では、全ての品目の酒類を販売することができます。
つまり、全ての品目の酒類を通信販売で取扱いたい場合には、対象者を1つの都道府県に絞り、一般酒類小売業免許を取得することで可能となります。
対象者を1つの都道府県に絞る方法としては、例えば、住所欄で特定の都道府県に限定するなどの方法が考えられます。
Q2.全品目を通信販売できる免許がありますか?
A2.現在は付与されていませんが、全品目の酒類を販売できる旧小売免許(ゾンビ免許)というものが存在します。
酒税法改正前の平成元年6月以前に交付を受けた「旧小売免許」を保有している場合には、全品目を通信販売できるケースがあります。この「旧小売免許」は、現在の酒税法第9条に規定がないため、ゾンビ免許と呼ばれています。
また、免許条件としては、「小売に限る」とされていることが多く、大手メーカーの酒類も小売であれば販売可能です。
現在は新規で取得ができない希少な免許であるため、M&Aや事業承継で免許を引継ぎしたいというニーズが多い免許です、ただし、M&A等による免許引継ぎのハードルは高く、専門家なしで実行することは困難です。
当センターでは、旧小売免許のM&Aや株式譲渡などの実績があり、M&A仲介業者の紹介もできますので、ご興味等ございましたらお問合せください。
6.まとめ
通信販売酒類小売業免許は、ECサイトや通販カタログを通じて、非対面で酒類を販売する際に必要となる重要な免許です。
単にネットでお酒を売りたいというだけでは取得できず、「人的要件」「場所的要件」「経営基礎的要件」「需給調整要件」など、複数の厳格な審査項目をクリアする必要があります。
また、販売可能な酒類も限定されており、大手メーカーのビールや日本酒などは基本的に対象外となる点にも注意が必要です。
さらに、一般酒類小売業免許との違いとして、申請に必要な添付書類の多さや、販売方法・対象者の範囲、販売可能な酒類が異なります。
特に、課税移出数量証明書や通販サイトの資料、酒類販売管理研修の受講証など、実務的な準備も求められるため、申請には時間と手間がかかります。
そのため、これから通販で酒類販売を始めたいと考えている人は、要件の理解とともに、取得する免許の種類や販売するお酒の種類(品目)などを慎重に検討することが求められます。
始めて申請を行う場合には、行政書士や税理士などの専門家のサポートを受けながら進めることをおすすめします。
東京酒類販売免許取得サポートセンターでは、元国税(酒類指導官付職員)が代表を務める行政書士事務所が展開する「お酒の免許取得申請手続きの支援に特化したサポートサービス」を提供しています。
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