決算状況の要件(赤字でも酒販免許取得はできる?)
2022/05/27
今回は、会社で酒類販売免許の取得を考えておられるお客様から、多い質問について、その回答と共にご紹介させていただきます。
Q.会社で酒販免許の取得を考えていますが、会社の直前3期の決算は黒字続きではありません。この場合には、酒販免許の取得は難しいのでしょうか。
A.直前3期の決算が全て黒字あることまでは必要ありませんが、お酒の免許取得時の審査項目のうち、「経営基礎要件」で要求されている「業績要件」と「財務要件」は充足する必要があります。
詳細は、以下において解説します。
1.経営基礎要件
酒類販売業免許の経営基礎要件の中に、次の要件があります。
(1)業績要件:直前3期の全ての事業年度において資本等の額(※)の20%を超える額の欠損を生じていないこと。
(2)財務要件:直前期の貸借対照表の繰越損失が資本等の額(※)を上回っていないこと。
※「資本等の額」=①資本金+②資本剰余金+③利益剰余金-④繰越利益剰余金
株主資本 |
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資本金 |
① |
資本剰余金 |
② |
資本準備金 |
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その他資本剰余金 |
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利益剰余金 |
③ |
利益準備金 |
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その他利益剰余金 |
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別途積立金 |
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繰越利益剰余金 |
④ |
(1)の業績要件では、「直前3期の全ての事業年度において、資本等の額の20%を超える額の欠損を生じていないこと」とされていることから、直前3期のうち1期でも資本等の額の20%以下の欠損額であればよく、直前3期の全期間での黒字が要求されているものではありません。
つまり、直前3期のうち1期でも黒字の期があれば問題ございません。
(2) の財務要件では、「直前期の貸借対照表の繰越損失が資本等の額を上回っていないこと」とされていることから、直前期で債務超過になっていなければ問題ございません。
これらの要件は両方ともに充足が必要となることから、例えば、3期連続で黒字であったとしても、債務超過が解消されていない場合にも、要件を満たすことができませんので、注意が必要です。
以下において、具体例で確認します。
2.具体例
①資本金:100万、繰越利益剰余金200万
純利益:第1期+50万(黒)、第2期▲40万(赤)、第3期+100万(黒)
判定結果:資本金等の額は100万円になります。1期でも20万円(資本等の額100万円×20%)を超える赤字があることから、業績要件を満たせません。
②資本金:500万、資本準備金500万円、繰越利益剰余金300万
純利益:第1期▲150万(赤)、第2期+100万(黒)、第3期+50万(黒)
判定結果:資本金等の額は1,000万円になります。1期も200万円(資本等の額1,000万円×20%)を超える赤字がないため、業績要件を満たします。
③資本金:1,000万、繰越利益剰余金△3,000万
純利益:第1期:+100万(黒)、第2期:+200万(黒)、第3期:+150万(黒)
判定結果:3期すべてが黒字で業績要件を満たしますが、債務超過(資本金等の額1,000万<繰越損失3,000万)のため、財務要件を満たせません。
⇒経営基礎要件を充足するためには、業績要件と財務要件の両方を満たす必要がありますので、注意が必要です。
3.対策
上記の要件を満たしていない場合、原則として決算状況が回復し、要件をクリアするまでお酒の免許取得の申請をすることは出来ません。ただし、事業を取り巻く状況によっては、至急で免許取得が必要な場合もあり得ます。
その場合には、例えば、増資や決算期の変更によって、債務超過を解消する対策が考えられます。
ただし、これらの対策によって、住民税の均等割の増加や、決算期変更に伴う税務申告の提出など、税務に与える影響も大きいので、注意が必要です。
4.まとめ
会社で酒販免許を取得するためには、「経営基礎要件」で要求されている「業績要件」と「財務要件」は充足する必要があります。
この要件は満たしていない場合には、原則として決算状況が回復するまで待つ必要がありますが、増資や決算期の変更を活用することで、要件を満たすようにすることも可能です。
ただし、その場合には、行政書士等のお酒の免許申請の専門家だけでなく税理士へも事前にご相談いただくことが望ましいです。
お酒の免許に関して、お困りの場合には、酒販免許と税務のエキスパートであります、東京酒類販売免許取得サポートセンターへご相談ください。